7 太陽を見ない蝉時雨羽虫の群れ 何処か遠い 耳鳴りに似て 呵責な乾燥を極めた大気 庭を埋め尽くす雑草の群れ 盛夏の匂いがしない 時を刻む音が重なり合って暦が過ぎていく あれは何の虫の声だろう 陽が落ちて随分経ってから開け放たれた窓 闇の気配はない 部屋を照らす蛍光灯 パーソナルコンピュータのうねり エアコンディショナの排気 快適さのために創りだされた不自然な空間 布団に沁み込んだ体臭 愛猫の臭い 生きるを感じさせる臭い 何処か遠い ズッと夢を見る 明瞭な幻覚が曖昧な現実を追い払う 虎になる夢を見ることもなく 蝶になる夢を見ることもない 夢も幻想も幻覚も 私は私 そして現実も 太陽を見ない ただそれだけのこと |